倉庫・工場のコンクリート床がひび割れるのはなぜ?原因や補修方法、予防のための対策について

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倉庫や工場のコンクリート床に発生するひび割れは、日常的に見られる現象ですが、その背後には様々な原因が潜んでいます。 単なる見た目の問題と軽視すると、建物の耐久性低下や重大な事故につながる可能性も否定できません。
この記事では、コンクリート床のひび割れがなぜ起こるのか、その原因から危険なひび割れの見分け方、具体的な補修方法、そして予防策に至るまで、専門家の視点から解説します。施設の管理者やオーナー様の一助となれば幸いです。
倉庫・工場のコンクリート床がひび割れるのはなぜ?原因や補修方法、予防のための対策について

倉庫や工場のコンクリート床に生じるひび割れは、施設の安全性や作業効率に直接影響を及ぼす重要な問題です。 ひび割れは、コンクリートの性質や施工方法、周辺環境、日々の使用状況など、複数の要因が複雑に絡み合って発生します。
本記事では、専門的な知見を持つ建築士および施工管理技士の立場から、ひび割れの根本的な原因を解明し、その種類に応じた最適な補修方法、さらには将来的な発生を防ぐための具体的な予防策まで、分かりやすく体系的に解説していきます。
倉庫・工場のコンクリート床がひび割れするのはなぜ?

コンクリート床のひび割れは珍しい現象ではありませんが、原因は一つではありません。 コンクリートが固まる過程で起こる自然な収縮から、施工時の品質、建物をとりまく環境、さらには使い方に至るまで、様々な要因が考えられます。
これらの原因を正しく理解することは、適切な補修や予防策を講じるための第一歩です。 ここでは、ひび割れを引き起こす主な原因を具体的に挙げ、それぞれのメカニズムについて専門家の視点で詳しく解説します。
乾燥による収縮
コンクリートはセメントと水、砂、砂利を混ぜて作られますが、硬化する過程で内部の水分が蒸発します。 水分が失われるとコンクリート全体の体積が減少し、この体積変化に部材が耐えられなくなると収縮ひび割れが発生します。 特に、コンクリートを打設した直後の急激な乾燥によって生じる「プラスチック収縮ひび割れ」と、硬化がある程度進んでからゆっくりと乾燥が進むことで発生する「乾燥収縮ひび割れ」があります。
これはコンクリートが持つ避けがたい性質の一つであり、ひび割れ発生の最も一般的な原因と言えます。
気温変化による収縮
コンクリートは、他の多くの物質と同様に、温度変化によって膨張したり収縮したりする性質を持っています。 夏の直射日光で高温になれば膨張し、冬の冷たい外気にさらされると収縮します。 この温度変化による伸縮が日常的に繰り返されることで、コンクリート内部に応力が蓄積し、やがてひび割れを引き起こします。
特に、屋外に面した床や、大きな温度差が生じやすい環境にある倉庫・工場では注意が必要です。 温度変化による影響を緩和するために設けられる伸縮目地が、適切に機能していない場合もひび割れの原因となります。
地盤沈下による圧力
建物を支えている地盤が、部分的に不均一に沈下する「不同沈下」が起こると、コンクリート床に想定外の力が加わり、大きなひび割れが発生することがあります。 もともとの地盤が軟弱であったり、埋立地であったりする場合や、近隣での大規模な掘削工事、地下水の汲み上げなどが原因で地盤沈下は起こり得ます。
この種のひび割れは、床だけでなく建物全体の構造に深刻なダメージを与えている可能性を示唆する危険なサインです。 補修を行う前に、まず地盤の状態を調査し、必要であれば地盤改良などの根本的な対策を講じなければなりません。
施工不良による強度不足
コンクリート床の強度は、施工時の品質に大きく左右されます。 例えば、コンクリートに加える水の量が多すぎると、作業はしやすくなりますが硬化後の強度が低下し、乾燥収縮も大きくなります。
また、コンクリートを型枠に流し込んだ後の締め固めが不十分だと、内部に空洞ができてしまい、設計通りの強度が出ません。 その他、コンクリートが十分に硬化するまでの養生期間が不適切であった場合も強度不足の原因となります。 これらの施工不良は、竣工直後には問題が見られなくても、経年や荷重によってひび割れとして表面化してきます。
凍結融解
寒冷地において特に注意が必要なのが、凍結融解によるひび割れです。 コンクリートの微細な隙間に侵入した水分が、冬場に凍結すると体積が約9%膨張し、内部から強い圧力を発生させます。
そして、日中に気温が上がると融解し、夜間に再び凍結するというサイクルが繰り返されることで、コンクリートの組織が徐々に破壊され、表面の剥離やひび割れを引き起こします。 この現象は「凍害」とも呼ばれ、特に水分が溜まりやすい床面や、屋外と接する部分で発生しやすく、コンクリートの劣化を著しく早める原因となります。
中性化
打設されたばかりのコンクリートは強いアルカリ性であり、その性質が内部の鉄筋を錆から守る役割を果たしています。 しかし、コンクリートは年月をかけて空気中の二酸化炭素と反応し、徐々にアルカリ性を失って中性に近づいていきます。 この現象を「中性化」と呼びます。
コンクリート自体は中性化しても強度はほとんど変わりませんが、中性化が鉄筋の位置まで達すると、鉄筋を保護する膜が破壊され、錆が発生しやすくなります。 鉄筋が錆びると体積が膨張し、内側からコンクリートを押し出すようにしてひび割れや剥落を引き起こします。
過負荷
コンクリート床は、設計段階で想定された重さに耐えられるように作られていますが、その耐荷重を超える過大な負荷がかかると、ひび割れが発生する原因となります。 倉庫や工場では、重量のある機械の新規設置、フォークリフトの頻繁な走行、想定以上の資材や製品の一箇所への集中保管などが過負荷につながる可能性があります。
特に、一点に重さが集中すると、床には強い曲げの力やせん断力が働き、ひび割れを引き起こしやすくなります。 施設のレイアウト変更や新たな設備の導入の際には、床の耐荷重を事前に確認することが不可欠です。
地震によるダメージ
地震の強い揺れは、建物全体を強制的に変形させ、コンクリート床にも大きな力を加えます。 その結果、耐えきれなくなった部分にひび割れが発生することがあります。 一度の大きな地震だけでなく、体感では分からないような小さな地震が繰り返されることでも、ダメージは徐々に蓄積され、ひび割れの原因となる場合があります。
地震後に発生したひび割れは、建物の構造的な弱点を示している可能性もあるため、特に注意が必要です。 柱や壁と床の接合部周辺に斜め方向のひび割れが見られる場合などは、専門家による詳細な点検が推奨されます。
コンクリート床のひび割れの種類

コンクリート床に発生するひび割れは、一見すると同じように見えても、その性質によって大きく二つに分類されます。 一つは建物の構造的な強度に影響が少ない「ヘアクラック」、もう一つは建物の安全性に関わる可能性のある「構造クラック」です。
この二つの違いを正しく見極めることは、ひび割れの危険度を判断し、補修の緊急性や方法を決定する上で非常に重要です。 ここでは、それぞれのひび割れが持つ特徴と、建物に与える影響について具体的に解説します。
ヘアクラック
「ヘアクラック」とは、その名の通り髪の毛(ヘア)のように細いひび割れのことで、一般的に幅が0.3mm未満、深さが4mm未満のものを指します。 主に、コンクリート表面層の乾燥収縮や温度変化が原因で発生し、構造体の強度に直接的な影響を及ぼすことはほとんどありません。 そのため、緊急の補修が必要となるケースは少ないとされています。
ただし、見た目の問題に加え、放置するとその微細な隙間から水分や汚れが侵入し、コンクリートの中性化を早めたり、美観を損ねたりする原因にはなります。 将来的にはより大きな劣化につながる可能性もあるため、経過を観察し、必要に応じて表面的な補修を検討することが望ましいです。
構造クラック
構造クラックは、ひび割れの幅が0.3mm以上、深さが4mm以上に達するもので、コンクリートの表面だけでなく、内部の構造体にまで及んでいる可能性が高いひび割れです。 地盤沈下、設計・施工上の問題、過大な荷重、地震など、建物の構造に影響を与える深刻な原因によって発生します。
この種のひび割れを放置すると、雨水などが内部に容易に侵入し、鉄筋を腐食させて建物の耐久性を著しく低下させる危険があります。 鉄筋の腐食が進むと、最悪の場合、コンクリートの剥落や建物の耐力低下につながるため、発見した際は速やかに専門家による診断を受け、適切な補修工事を実施する必要があります。
補修が必要な危険なひび割れの見分け方

床にひび割れを発見した際、すべてのひび割れが直ちに危険というわけではありません。 しかし、中には建物の安全性に関わる重大なサインであるものも存在します。 専門家でなくとも、いくつかのチェックポイントを知っておくことで、補修の緊急性を判断し、専門家へ相談すべきかどうかの目安とすることができます。
ここでは、ひび割れの「幅と深さ」「進行性」「周辺の状態」という三つの観点から、補修が必要な危険なひび割れを見分けるための具体的な方法を解説します。
ひび割れの幅が0.3mm以上、深さが4mm以上
ひび割れの危険度を判断する最も客観的な指標が、その幅と深さです。 一般的に、ひび割れの幅が0.3mmを超え、深さが4mmを超える場合は「構造クラック」と判断され、建物の構造的な強度に影響を及ぼしている可能性があります。 0.3mmという幅は、一般的な名刺の厚みとほぼ同じです。
名刺をひび割れに差し込んでみて、簡単に入るようであれば危険な兆候と判断できます。 このようなひび割れは、水分や炭酸ガスがコンクリート内部へ侵入する経路となり、鉄筋の腐食を促進させるため、早期の対応が求められます。 専門的な測定器具がなくても、身近なものでおおよその幅を確認し、判断基準とすることが可能です。
ひび割れが進行・拡大している
発見した当初は小さかったひび割れが、時間の経過とともに長くなったり、幅が広がったりしている場合、それは非常に注意すべきサインです。 ひび割れが進行しているということは、その原因となっている地盤沈下や建物の歪みなどが現在も続いていることを意味します。 ひび割れの進行状況を確認するためには、ひび割れの両端に日付とともにマーキングをしたり、定期的に同じ角度から写真を撮影して比較したりする方法が有効です。
もし、明らかにひび割れが拡大していることが確認できた場合は、表面的な補修では問題が解決しないため、原因を特定するための専門的な調査と、根本的な対策が必要となります。
ひび割れ周辺にズレや段差がある
ひび割れを境にして、左右の床面に高さのズレや段差が生じている場合、これは構造的に深刻な問題が起きている可能性が高い、非常に危険な兆候です。 不同沈下などにより、床スラブ(床の構造体)自体が破壊されていることが考えられます。 このような段差は、フォークリフトの安全な走行を妨げ、荷崩れや転倒事故を引き起こす直接的な原因にもなります。
また、ひび割れ部分から水が染み出している、あるいは白い粉状のもの(エフロレッセンス)が付着している場合も、内部で水が浸入し、コンクリートの成分が溶け出している証拠であり、劣化が進行しているサインです。 これらの症状が見られたら、直ちに専門家に相談すべきです。
倉庫・工場のクリート床がひび割れたときの補修方法

コンクリート床のひび割れを補修する方法は一種類ではありません。 ひび割れの幅や深さ、原因、そして求められる機能によって、様々な工法の中から最適なものを選択する必要があります。 軽微なひび割れを埋めるだけの簡単な処置から、床全体の強度を回復させる大規模な工事まで、その選択肢は多岐にわたります。
不適切な工法を選ぶと、補修後すぐに再発したり、かえって状態を悪化させたりすることもあります。 ここでは、代表的なひび割れ補修工法をいくつか紹介し、それぞれの特徴と適用範囲について解説します。
注入工法
注入工法は、ひび割れ内部にエポキシ樹脂のような低粘度で接着性の高い補修材を、専用の器具を使って圧力をかけながら注入し、硬化させる方法です。 ひび割れの隅々まで補修材を行き渡らせることで、コンクリートを再び一体化させ、構造的な強度を回復させることを目的とします。
特に、建物の耐力に関わる「構造クラック」の補修に非常に有効です。 また、ひび割れを完全に塞ぐことで、水や劣化因子の侵入を防ぎ、内部鉄筋の腐食を抑制する効果も期待できます。 ひび割れの深部まで確実に充填するには専門的な技術と機材が必要となる工法です。
被覆工法
被覆工法は、ひび割れそのものを直接補修するのではなく、ひび割れが発生しているコンクリート表面全体を塗膜材やシート状の材料、薄いモルタルなどで覆ってしまう方法です。 主に、構造的な問題はないものの、広範囲に多数のヘアクラックが発生している場合に採用されます。
この工法の目的は、ひび割れからの水や炭酸ガスの侵入を防ぎ、コンクリートの劣化進行を抑制することにあります。 床全体の防水性や耐薬品性を向上させたり、美観を改善したりする効果も得られますが、ひび割れによる構造的な強度低下を回復させるものではないため、構造クラックには適用できません。
充てん工法
充てん工法は、比較的幅の広いひび割れに対して行われる補修方法で、「Uカットシール工法」とも呼ばれます。 まず、電動カッターなどを使ってひび割れに沿ってU字型またはV字型に溝を削り、その溝の中にシーリング材や樹脂モルタルなどの補修材を充てんします。 あえて溝を広げることで、補修材の接着面積を確保し、耐久性を高めることができます。
この工法で使われるシーリング材は伸縮性があるため、温度変化などでひび割れが多少動いても、それに追従して防水性を保つことが可能です。 構造的な一体性を完全に回復させる効果は注入工法に劣りますが、水の浸入防止を主目的とする場合に有効です。
オーバーレイ
オーバーレイ工法は、劣化した既存のコンクリート床の上に、セメント系や樹脂系の材料を数センチ程度の厚さで新たに塗り重ねることで、床全体をリニューアルする方法です。 ひび割れが多数発生している場合や、コンクリート表面の摩耗、凹凸が激しい場合に採用されます。 床全体の強度を向上させ、平滑で安全な床面を再生することができます。
施工にあたっては、新しい層と古い床とが一体化するよう、既存床の脆弱な部分を入念に除去するなどの下地処理が非常に重要です。 他の工法に比べて費用や工期がかかりますが、床の機能性を根本的に回復させたい場合に適しています。
ポリマーセメントモルタルの補修
ポリマーセメントモルタルとは、通常のセメントモルタルにアクリル系などのポリマーを混入した補修材料です。 この材料を使うことで、ひび割れ部分やコンクリートが欠けてしまった部分を埋める補修を行います。
ポリマーを混入することで、通常のモルタルに比べてコンクリートへの接着性が格段に向上し、防水性や耐久性も高まります。 ひび割れを埋めるだけでなく、表面の凹凸を調整して平滑にしたり、角が欠けた部分を元の形に修復したりと、様々な補修に対応できる汎用性の高さが特徴です。 比較的施工もしやすく、多くの現場で用いられている補修方法の一つです。
含浸工法
含浸工法は、コンクリートの表面にけい酸塩系の液体を含浸させることで、コンクリート自体を緻密化し、改質する工法です。 塗布された材料はコンクリート内部に浸透し、セメントの水和反応で生成された物質と化学的に反応して、空隙を埋める結晶体を生成します。
これにより、コンクリートの水密性が高まり、外部からの水分や劣化因子の侵入を防ぎます。 ひび割れを直接埋めるというよりは、コンクリート全体を強化して劣化の進行を抑制し、新たなひび割れの発生を防ぐという予防的な意味合いが強い工法です。 微細なヘアクラックであれば、この緻密化によって塞がる効果も期待できます。
DIYでの補修は可能?業者に依頼すべきケース

コンクリート床のひび割れを発見した際、費用を抑えるためにご自身での補修(DIY)を検討することもあるかもしれません。 確かに、軽微なひび割れであればDIYでの対応も可能です。 しかし、ひび割れの種類や状態を見誤ると、不適切な処置によってかえって問題を深刻化させてしまうリスクも伴います。
ここでは、どのようなひび割れであればDIYで対応できるのか、そしてどのようなケースでは専門業者に依頼すべきなのか、その判断基準を明確に解説します。
DIYで補修できるひび割れ
DIYで対応が可能なのは、建物の構造的な強度に影響を与えない、ごく軽微なひび割れに限られます。 具体的には、幅が0.3mm未満の「ヘアクラック」がその対象です。 ホームセンターなどで販売されている、スプレータイプのセメント補修材や、チューブに入ったひび割れ補修用のパテ、コーキング材などを使用します。
作業手順としては、まずワイヤーブラシなどでひび割れ部分のホコリやゴミをきれいに取り除き、その後、補修材を隙間に充てんし、ヘラなどで表面を平滑に仕上げます。 ただし、これはあくまでも見た目の改善や、表面からの水の浸入を防ぐための応急処置的な意味合いが強く、構造的な強度を回復させるものではないことを理解しておく必要があります。
専門業者に依頼すべきひび割れ
幅が0.3mmを超える「構造クラック」が見られる場合は、迷わず専門業者に相談してください。 また、ひび割れの幅が広がったり長くなったりしている、ひび割れを境に段差が生じている、水が染み出しているといった症状がある場合も同様です。 これらの現象は、地盤沈下や鉄筋の腐食など、建物の安全性に関わる深刻な問題が背景にある可能性が極めて高いからです。
専門業者は、ひび割れの状態を正確に診断して根本原因を特定し、エポキシ樹脂注入工法などの専門的な技術と機材を用いて、構造的な強度を回復させる適切な補修を行います。 自己判断での不適切な補修は、問題の発見を遅らせ、将来的に大規模で高額な修繕工事が必要になる事態を招きかねません。
コンクリート床のひび割れ補修にかかる費用相場

コンクリート床のひび割れ補修費用は、DIYで済ませるか、専門業者に依頼するかによって大きく異なります。 さらに、業者に依頼する場合でも、ひび割れの長さや本数、深さといった状態、そしてどのような工法を用いるかによって金額は大きく変動します。
ここでは、それぞれのケースにおける費用感の目安を示すことで、予算を検討する際の参考にしていただける情報を提供します。 ただし、これらはあくまで一般的な相場であり、正確な金額は必ず現場調査の上で見積もりを取得して確認してください。
DIYで補修する場合の費用
DIYで補修を行う場合の主なコストは、補修材料と道具の購入費です。 数か所のヘアクラックを補修する程度であれば、セメントスプレーや補修用パテ、シーリング材などの材料費は数千円程度で収まります。 これに加えて、清掃用のワイヤーブラシや、補修材をならすためのヘラなどの道具を新たに購入したとしても、総額で1万円を超えることは少ないでしょう。
手軽でコストを低く抑えられるのがDIYの最大のメリットですが、あくまで応急処置であり、補修できるひび割れの種類が限定される点や、仕上がりの質、耐久性は専門家の施工には及ばない点を考慮する必要があります。
業者に依頼する場合の費用
専門業者に依頼する場合、費用は工法と施工規模によって大きく変わります。 ひび割れに樹脂を注入する「注入工法」や、ひび割れをカットして充填する「Uカットシール工法」の場合、費用の目安はひび割れの長さ1メートルあたりで計算されることが多く、数千円から1万5千円程度が相場となります。 ひび割れの本数や総延長が長くなれば、その分費用も増加します。
一方、床全体が劣化しており、上から新しいコンクリートを打設する「オーバーレイ工法」などを採用する場合は、施工面積1平方メートルあたり1万円以上となり、工事全体の総額は数十万円から数百万円に及ぶこともあります。 これには材料費のほか、人件費や機材費、下地処理費用などが含まれます。
信頼できる補修業者の選び方

コンクリート床のひび割れ補修は、原因や状況に応じた適切な診断と施工が不可欠であり、業者選びがその成否を大きく左右します。 まず重要なのは、コンクリート構造物の診断や補修に関する専門知識と豊富な実績を持つ業者を選ぶことです。 建設業の許可はもちろん、「コンクリート診断士」などの専門資格を持つ技術者が在籍しているかどうかも一つの判断基準になります。 会社のウェブサイトで過去の施工事例を確認し、自社の施設と似たようなケースの経験があるかをチェックするのも有効です。
また、見積書の内容が詳細で明確であるかも重要なポイント。 「工事一式」といった曖昧な表記ではなく、工法、使用材料、数量、単価などが具体的に記載されているかを確認しましょう。 複数の業者から見積もりを取り、価格だけでなく、提案内容や担当者の説明の分かりやすさ、対応の誠実さなどを総合的に比較検討することが、信頼できるパートナーを見つけるための鍵となります。
倉庫・工場のコンクリート床のひび割れ防止対策

コンクリート床のひび割れは、一度発生すると補修に手間とコストがかかります。 そのため、問題が起きてから対処するだけでなく、そもそもひび割れを発生させないための予防策を講じることが、建物を長く健全に維持する上で非常に重要です。
ひび割れの予防は、建物を建てる際の設計や施工の段階で考慮すべきことから、完成後の日々の使い方やメンテナンスに至るまで、多岐にわたります。 ここでは、ひび割れを未然に防ぐための具体的な対策を、専門的な視点から解説します。
床の材料の配合を工夫する
ひび割れに強いコンクリート床を作るためには、新設時の材料配合が極めて重要です。 ひび割れの主な原因である乾燥収縮を抑制するため、コンクリートに含まれる水の量(単位水量)をできるだけ少なくすることが基本となります。 作業性を確保しながら水量を減らすために、高性能な減水剤を使用するのが一般的です。
また、コンクリートの収縮そのものを低減させる効果のある「収縮低減剤」を添加したり、硬化初期にわずかに膨張することで乾燥収縮を打ち消す「膨張材」を用いたりする方法も有効です。 さらに、短い繊維状の材料をコンクリートに混ぜ込むことで、微細なひび割れの発生や進展を抑制する効果も期待できます。
施行後に処置を行う
コンクリートを打設した後の処置も、ひび割れ防止に大きく影響します。 コンクリートは、打設後、硬化するまでの初期段階が特に重要です。 この時期に表面が急激に乾燥すると、ひび割れが発生しやすくなります。 これを防ぐため、コンクリートの表面をビニールシートで覆ったり、水を撒いたりして湿った状態を保つ「湿潤養生」を一定期間行うことが不可欠です。
また、広い面積の床では、コンクリートが収縮する際に力が分散するように、あらかじめ一定間隔でカッターなどで溝(収縮目地)を入れておく対策も有効です。 これにより、目地以外の場所にランダムなひび割れが発生するのを防ぎ、ひび割れを計画的な位置に誘導することができます。
定期的にメンテナンスを行う
建物が完成し、使用を開始した後も、定期的なメンテナンスがひび割れの予防と早期発見に繋がります。 床の表面に塗装やコーティングが施されている場合、それらは時間とともに摩耗したり劣化したりします。 定期的に塗り替えを行うことで、床の防水性を維持し、コンクリート内部への水分の侵入を防ぎます。
これは、中性化や凍結融解による劣化を抑制する上で非常に効果的です。 また、日常的な清掃や点検を通じて、床の状態を常に把握しておくことも重要です。 ごく初期の軽微なひび割れを発見し、早い段階で補修しておけば、それが大きな構造クラックに発展するのを未然に防ぐことができ、結果的に修繕コストを抑えることにもなります。
再振動締固め
コンクリートを打設して締め固めた後、時間の経過とともに材料が分離し、表面に余分な水分(ブリーディング水)が浮き上がってきます。 この水分が蒸発すると、コンクリート自体が少し沈下します。 このとき、内部の鉄筋などが障害となってコンクリートが均等に沈下できず、鉄筋の直上などにひび割れ(沈みひび割れ)が発生することがあります。 これを防ぐための有効な手法が「再振動締固め」です。
コンクリートの初期硬化が始まる前の、沈下が一通り落ち着いたタイミングを見計らって、再度バイブレーターなどで軽い振動を与えます。 これにより、沈下によって生じた隙間が埋まり、コンクリートの密度が高まることで、ひび割れのリスクを低減させることが可能です。
倉庫・工場のクリート床のひび割れを放置するリスク

「これくらいのひび割れなら大丈夫だろう」と安易に判断し、コンクリート床のひび割れを放置することは、様々なリスクを招く可能性があります。 ひび割れは、単に見た目が悪いというだけでなく、建物の構造的な安全性や、そこで行われる作業の効率、さらには従業員の安全を脅かす潜在的な危険性をはらんでいます。
ここでは、ひび割れを放置することによって具体的にどのようなリスクが生じるのかを段階的に解説し、早期対応がいかに重要であるかを明らかにします。
ひび割れの拡大
一般的なコンクリートにおいて、一度発生したひび割れが自然に塞がることは通常ありません。むしろ、適切な対策をせずに放置すると、ひび割れは時間の経過とともにさらに長く、広くなる可能性が高いです。これは、ひび割れの先端部分に力が集中しやすいため、フォークリフトの通行による振動や衝撃、日々の温度変化によるコンクリートの伸縮などが繰り返されることで、ひび割れが徐々に進行するためです。
しかし、近年では、コンクリートに生じたひび割れを自ら修復する「自己治癒コンクリート」の研究開発が進み、一部実用化されています。この技術では、コンクリート内に含まれるバクテリアの代謝機能などを利用し、ひび割れから侵入した水分と反応して炭酸カルシウムを生成することで、ひび割れを埋める仕組みです。
最初のうちは問題にならないほどの小さなヘアクラックであっても、一般的なコンクリートで放置された場合、やがては建物の構造に影響を及ぼす構造クラックへと発展する可能性があります。その結果、補修はより大規模でコストのかかるものになることがあります。
建物の劣化・強度低下
ひび割れは、建物の劣化を加速させる「入り口」の役割を果たします。 ひび割れの隙間から雨水や空気中の二酸化炭素、沿岸部では塩分などがコンクリート内部に侵入しやすくなります。 水分と二酸化炭素はコンクリートの中性化を促進し、内部の鉄筋が錆びやすい環境を作り出します。
鉄筋が錆び始めると、その体積は数倍に膨張し、内側からコンクリートを押し破るようにして、新たなひび割れやコンクリートの剥落(爆裂現象)を引き起こします。 この状態に至ると、鉄筋とコンクリートが一体となって強度を発揮するという本来の機能が失われ、建物全体の構造的な強度が低下してしまいます。
作業効率の低下・事故の危険性
床のひび割れや、それに伴って生じる段差・凹凸は、倉庫や工場内での日々の作業に直接的な悪影響を及ぼします。 フォークリフトや台車がひび割れの上を通過するたびに発生する振動や衝撃は、運搬中の荷物の安定性を損ない、荷崩れの原因となり得ます。 また、スムーズな走行が妨げられることで作業スピードが低下し、生産性の悪化にもつながります。 さらに重大なリスクとして、作業員がひび割れや段差につまずいて転倒し、怪我をする危険性が高まります。
床の健全性は、安全な作業環境を確保するための基本的な条件であり、ひび割れの放置は労働安全衛生上の問題にも直結します。
構造的な問題・建物の倒壊
床に現れたひび割れが、実は建物の基礎や地盤に関わる構造的な問題の兆候である場合、それを放置することは極めて危険な行為です。 例えば、ひび割れが建物の特定の方向に集中して発生している、柱や耐力壁の周りに大きな斜めのひび割れがある、といったケースでは、建物全体が歪んでいる可能性が疑われます。
このような根本的な問題を解決しないまま放置し続けると、建物の耐久性は著しく低下します。 そして、大きな地震が発生した際には、想定された耐震性能を発揮できず、床が抜け落ちたり、最悪のケースでは建物全体の倒壊に至ったりする可能性もゼロではありません。 ひび割れは、建物が発する重要な警告サインと捉える必要があります。
まとめ
倉庫や工場のコンクリート床に発生するひび割れは、乾燥収縮、温度変化、地盤沈下、施工不良、過負荷など、多様な原因によって生じます。 ひび割れは、緊急性の低い「ヘアクラック」と、建物の安全性に影響を及ぼす可能性のある「構造クラック」に大別され、幅0.3mmを一つの目安として見分けることができます。
補修には、ひび割れの状態に応じて注入工法や充てん工法、オーバーレイ工法などが選択され、軽微なものはDIYも可能ですが、構造クラックや進行が見られる場合は専門業者による診断が不可欠です。 ひび割れを放置すると、劣化の進行や強度の低下、作業上の事故リスク増大といった事態を招くため、定期的な点検を行い、問題を発見した際には早期に適切な対応をとることが、施設の資産価値と安全性を維持する上で重要です。
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資格所有者
-
一級建築士 13人
二級建築士 41人
一級建築施工管理技士 29人
一級土木施工管理技士 10人 -
宅地建物取引士 19人
設備設計一級建築士 1人
土地家屋調査士 1人
一級建設業経理士 2人
中小企業診断士 1人
会社概要
| 社名 | 株式会社澤村 |
|---|---|
| 本社 | 〒520-1121 滋賀県高島市勝野1108番地3 TEL. 0740-36-0130(代) FAX. 0740-36-1661 |
| 大津オフィス | 〒520-0242 滋賀県大津市本堅田三丁目33-16 エルミナ リアン 2F TEL. 077-572-3879 FAX. 077-573-8384 |
| 敦賀オフィス | 〒914-0811 福井県敦賀市中央町一丁目8-10 TEL. 0770-22-6005 FAX. 0770-47-6405 |
| 資材センター | 滋賀県高島市勝野873-1 |
| 創業 | 昭和25年12月6日 |
| 資本金 | 50,000,000円(グループ全体) |
| 従業員数 | 182名(グループ全体)※2024年10月1日現在 |
| 売上高 | 63億円(グループ全体)※2024年9月実績 |
| 営業種目 | 建築一式、土木一式、大工工事、水道施設工事、とび・土工工事、造園工事、左官工事、石工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、熱絶縁工事、建具工事、宅地建物取引業、建築・土木設計、土地活用 |
| 許可・登録 | 〈建設業許可〉 滋賀県知事許可(特・般-3) 第80123号 〈一級建築士事務所〉 滋賀県知事登録(カ) 第126号 〈宅地建物取引業者〉 滋賀県知事登録(12) 第1267号 |
| 取引銀行 | 滋賀銀行 高島支店 関西みらい銀行 安曇川支店 滋賀県信用組合 安曇川支店 |
| 関連会社 | 株式会社トータル・オーガニック・プランニング 沢村ホーム株式会社 |
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