倉庫レイアウトの考え方|作業効率を改善し最適化する基本と手順
最終更新日:
倉庫の作業効率やコスト、安全性は、レイアウトに大きく左右されます。 優れた倉庫レイアウトは、単に物を整理整頓するだけでなく、入荷から出荷までの一連の作業フローを円滑にし、生産性を向上させるための重要な要素です。
本記事では、倉庫レイアウトの最適化によって得られるメリットや設計時に守るべき基本原則、そして具体的な改善手順について詳しく解説します。 現状の課題を解決し、より効率的な倉庫運営を目指すための考え方を整理します。
倉庫レイアウトの見直しで実現できる5つのメリット
倉庫レイアウトの見直しは、日々の作業効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。 動線の最適化や保管方法の工夫により、作業時間の短縮やコスト削減、スペースの有効活用など、多岐にわたるメリットが期待できます。
また、作業環境の改善は、ヒューマンエラーの削減や従業員の安全性向上にも直結し、安定的で持続可能な倉庫運営の基盤を築きます。 ここでは、レイアウト改善によって実現できる具体的な5つのメリットを解説します。
メリット1:倉庫内での作業時間を短縮できる
最適な倉庫レイアウトは、作業員の移動距離を最小限に抑え、作業時間の短縮を実現します。 例えば、入荷から検品、棚入れ、ピッキング、梱包、出荷という一連の工程がスムーズに流れるよう動線を設計することで、作業員があちこちへ無駄に行き来する必要がなくなります。
特に、出荷頻度の高い商品をピッキングしやすい手前のエリアに配置するなどの工夫は、ピッキング作業にかかる時間を大幅に削減します。 こうした移動時間のロスをなくすことが、倉庫全体の生産性向上につながる第一歩となります。
メリット2:人件費や光熱費などのコストを削減できる
作業時間の短縮は残業時間の削減に直結し、結果として人件費の抑制につながります。 少ない人数や時間で同じ物量を処理できるようになるため、人手不足の解消にも貢献するでしょう。
また、効率的なレイアウトは光熱費などの間接的なコスト削減にも寄与します。 例えば、商品の配置を集約させ、使用するエリアを限定することで、照明や空調の稼働範囲を最適化できます。 コスト管理は倉庫運営の基本であり、レイアウトの見直しはその根幹を支える有効な手段の一つです。
メリット3:保管スペースを最大限に活用できる
倉庫のスペースには限りがあるため、保管効率をいかに高めるかが重要です。 レイアウト変更によって、これまで活用されていなかったデッドスペースを有効な保管場所に変えることができます。 例えば、棚の配置を見直して通路幅を最適化したり、天井までの高さを活かせるラックを導入したりすることで、保管能力は飛躍的に向上します。
これにより、同じ床面積でもより多くの商品を保管できるようになり、外部倉庫の利用コスト削減や、将来の物量増加への対応力強化につながります。
メリット4:ピッキングミスなどのヒューマンエラーを減らせる
整理整頓され、どこに何があるか分かりやすい倉庫環境は、ピッキングミスや誤出荷といったヒューマンエラーの削減に効果的です。 例えば、類似品を隣同士に置かない、商品の特性ごとにエリア分けを行うといった倉庫レイアウト例を参考にロケーション管理を徹底することで、作業員は目的の商品を迷わず迅速に見つけられます。
探し回る時間が減るだけでなく、品番の見間違いなども起こりにくくなります。 エラーの削減は、顧客満足度の向上と、返品や再発送にかかる無駄なコストの削減に直接貢献します。
メリット5:作業員の転倒や衝突事故を防ぎ安全性を高める
安全な作業環境の確保は、倉庫運営における最優先事項です。 通路が狭かったり、人とフォークリフトの動線が交差していたりするレイアウトは、衝突や転倒事故のリスクを高めます。
通路幅を十分に確保し、人や台車が通るルートとフォークリフトが走行するルートを明確に分離することで、これらの危険を大幅に低減できます。 また、整理整頓された環境は、床の障害物を減らし、つまずきによる事故を防ぎます。 安全性の高い職場は、従業員の安心感につながり、離職率の低下や生産性の向上にも良い影響を与えます。
倉庫レイアウトを設計する前に押さえるべき5つの基本原則
効果的な倉庫レイアウトを設計するためには、やみくもに着手するのではなく、基本となるいくつかの原則を押さえておく必要があります。 これらの原則は、作業効率、保管効率、安全性を高いレベルで両立させるための指針となります。
「一筆書き」の動線、効率のバランス、出荷頻度に応じた配置、安全な通路幅、そして将来への備え。 これら5つの原則を念頭に置いて計画を進めることで、失敗のリスクを減らし、長期的に機能するレイアウトを実現できます。
原則1:作業動線は「一筆書き」になるよう意識する
倉庫内の作業動線は、入荷から出荷までの一連の工程が、逆流したり交差したりすることなく、一方向にスムーズに流れる「一筆書き」の状態が理想です。 具体的には、入荷エリア、検品エリア、保管エリア、ピッキングエリア、梱包エリア、出荷エリアをこの順に配置し、作業員や物が後戻りする必要がないように設計します。
動線がシンプルになることで、作業者同士の衝突や移動の渋滞が減り、作業全体の流れがよどみなく進みます。 この原則を守ることが、移動距離の最短化と作業効率の最大化を実現する基本です。
原則2:作業効率と保管効率の最適なバランスを見つける
倉庫レイアウトを考える上では、「作業効率」と「保管効率」という二つの要素がしばしばトレードオフの関係になります。 例えば、通路幅を広く取ればフォークリフトの走行や商品の搬出入がしやすくなり作業効率は上がりますが、その分だけ保管スペースは減少します。
逆に、棚を詰め込んで保管効率を最大限に高めると、通路が狭くなり作業性が低下する可能性があります。 どちらか一方を追求するのではなく、扱う商品の種類や入出荷の頻度、使用するマテハン機器などを考慮し、自社の運営にとって最もバランスの取れたポイントを見極める必要があります。
原則3:商品の出荷頻度を分析して配置を決める(ABC分析)
すべての商品を同じように扱うのではなく、出荷頻度に応じて保管場所を最適化することが重要です。 その際に有効な手法が「ABC分析」です。 これは、商品を売上高や出荷量の多い順にA・B・Cの3グループにランク分けする手法です。 最も出荷頻度の高いAランクの商品は、移動距離が最短で済む出入口付近に配置します。
一方で、出荷頻度の低いCランクの商品は、倉庫の奥や上段など、アクセスの優先度が低い場所に保管します。 この原則を適用することで、ピッキング作業の大部分を占めるAランク商品の取り扱いが効率化され、倉庫全体の生産性が向上します。
原則4:作業員の安全を確保できる通路幅を設定する
通路幅は、作業の効率性だけでなく、従業員の安全に直接関わる重要な要素です。 通路は、そこを通る人や使用する機器に合わせて適切な幅を確保する必要があります。 例えば、フォークリフトが走行するメイン通路では、フォークリフトの機種や積載方法によって2.5mから4.0m程度の幅が目安とされています。
人が手作業でピッキングを行う通路であっても、台車を押しながらでも安全に通行できる幅が必要です。 通路幅が不十分だと、作業効率が低下するだけでなく、人や物との接触事故を引き起こす原因となりかねません。
原則5:将来の物量変動に備えて余剰スペースを確保する
倉庫レイアウトを設計する際は、現状の物量に完全に最適化するだけでなく、将来的な変動を見越してある程度の余剰スペースを確保しておくことが賢明です。 事業の成長に伴う取扱量の増加や、季節的な需要の波、新規商品の取り扱い開始など、物量は常に変動する可能性があります。
レイアウトに全く余裕がない状態だと、こうした変化に柔軟に対応できず、倉庫内が混乱する原因となります。 計画段階で意図的に空きスペースを設けておくことで、急な物量増にもスムーズに対応でき、大規模なレイアウト変更を頻繁に行う必要がなくなります。
倉庫レイアウトを改善・最適化する4つのステップ
倉庫レイアウトの改善は、思いつきで進めるのではなく、体系的なアプローチを取ることが成功の鍵です。 まずは現状を正確に把握することから始め、倉庫の骨格となる基本レイアウトを決定し、次に商品の特性に合わせて詳細な配置を詰めていきます。
そして、実行後も効果を測定し、継続的に改善していくサイクルを回すことが不可欠です。 ここでは、レイアウトの改善・最適化を計画的に進めるための具体的な4つのステップを紹介します。
ステップ1:現状の業務フローと課題を可視化する
レイアウト改善の第一歩は、現状を正確に把握することです。 まず、入荷から出荷までの一連の業務フローを詳細に洗い出します。 その上で、作業員の動線や商品の流れを図面に落とし込み、どこで無駄な動きや停滞が発生しているかを可視化します。
例えば、作業員の歩数や移動距離、各作業にかかる時間を計測するのも有効です。 また、現場の作業員にヒアリングを行い、「通路が狭くて作業しにくい」「商品を探すのに時間がかかる」といった具体的な問題点を収集します。 これらの情報をもとに、改善すべき課題を明確に定義することが、的確な解決策を導き出すための基礎となります。
ステップ2:倉庫全体の基本レイアウト(I型・U型)を決定する
現状の課題を把握したら、次に倉庫全体の骨格となる基本的なレイアウトパターンを決定します。 代表的なパターンには「I型」や「U型」があります。 I型は、建屋の一方の端に入荷口、もう一方の端に出荷口を設ける直線的なレイアウトで、動線がシンプルになるのが特徴です。
一方、U型は、入荷口と出荷口が同じ側に隣接して設けられるレイアウトで、設備や人員を集約しやすいメリットがあります。 倉庫の建物の形状、敷地の広さ、入出荷口の位置、そして主要な作業フローなどを総合的に考慮し、自社のオペレーションに最も適した基本レイアウトを選択します。
ステップ3:商品の特性に合わせて保管場所(ロケーション)を割り当てる
基本レイアウトという骨格が決まったら、次に個々の商品をどこに配置するか、詳細なロケーション設計を行います。 この段階では、ステップ1で分析した商品の特性が重要な判断基準となります。 ABC分析の結果に基づき、出荷頻度の高いAランク品を出入口に近い、最もアクセスしやすい場所に配置します。
さらに、商品のサイズや重量、形状も考慮し、重いものは下段に、軽いものは上段に置くなど、安全性と作業効率を両立させる配置を考えます。 また、関連商品を近くにまとめる、類似品は離すといった工夫も、ピッキング効率の向上やミスの削減に有効です。
ステップ4:定期的な効果測定と改善計画を立てる
倉庫レイアウトの変更は、実施して終わりではありません。 新しいレイアウトが意図した通りの効果を上げているかを確認するために、定期的な効果測定が不可欠です。
レイアウト変更前に計測した作業時間や移動距離、ピッキングミス率などのKPI(重要業績評価指標)を、変更後も同様に計測し、数値を比較・評価します。 もし改善が見られない、あるいは新たな問題が発生した場合は、その原因を分析し、さらなる改善計画を立てます。 このようにPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回し続けることで、倉庫レイアウトを常に最適な状態に維持できます。
代表的な倉庫レイアウト2つのパターンと特徴
倉庫の全体的な動線を決定する基本レイアウトには、いくつかの代表的なパターンが存在します。 中でも「I型レイアウト」と「U型レイアウト」は、多くの倉庫で採用されている基本的な型です。
これらのレイアウトは、入荷口と出荷口の位置関係によって定義され、それぞれに異なる特徴とメリットがあります。 自社の倉庫の形状や規模、オペレーションの特性を理解し、どちらのパターンがより適しているかを見極めることが、効率的な倉庫設計の第一歩となります。
I型レイアウト:入荷から出荷までが一直線でシンプルな動線
I型レイアウトは、倉庫の建屋の一方の壁に入荷口を、その反対側の壁に出荷口を配置するレイアウトです。 この配置により、入荷、検品、保管、ピッキング、出荷という一連の作業工程が、倉庫内を直線的に一方向に進むことになります。 最大のメリットは、動線がシンプルで交差しにくいため、作業員やフォークリフトの渋滞、衝突のリスクが低い点です。
作業の流れが分かりやすく、管理しやすいことも特徴です。 敷地に奥行きがあり、入荷から出荷までを一方通行で完結させたい大規模な倉庫や通過型物流センター(TC)などに適したレイアウトと言えます。
U型レイアウト:入出荷口が同じ場所で省スペース化を実現
U型レイアウトは、入荷口と出荷口が同じ壁面に隣接して配置されるレイアウトです。 入荷した商品は倉庫の奥に向かって保管され、ピッキングされた商品は再び入口側に戻ってきて出荷されます。 動線がアルファベットの「U」の字を描くことからこの名で呼ばれます。
このレイアウトのメリットは、入出荷エリアを1か所に集約できるため、フォークリフトなどの荷役機器や検品・梱包スペース、事務所などを効率的に配置でき、省スペース化につながる点です。 また、人員の配置も柔軟に行いやすいです。 比較的小規模な倉庫や、限られたスペースを有効活用したい場合に適しています。
まとめ
倉庫レイアウトの最適化は、作業効率の改善、コスト削減、安全性の向上を実現するための根幹となる取り組みです。 効果的なレイアウトを構築するには、まず現状の業務フローと課題を正確に把握し、動線の一筆書きやABC分析といった基本原則に沿って計画を進める必要があります。
レイアウトのパターンにはそれぞれ特徴があり、自社の倉庫の形状や運用方法に合わせて最適なものを選択し、詳細なロケーション設計を行います。 一度レイアウトを変更した後も、定期的な効果測定と改善を継続するPDCAサイクルを回すことで、変化に対応し続けることができる、生産性の高い倉庫運営が可能になります。
工場・倉庫の暑さ対策に『クールサーム®』
屋根に塗るだけで空調代を削減!※1
可視光線、近赤外線のほとんどを反射し、また一部吸収した太陽エネルギーを遠赤外線として放散、さらに遮断層を作り熱伝導を防ぐ、といった特性を持つNASAが開発した特殊なセラミックで屋根や壁面を塗装。劣化の原因となる紫外線もカットして、断熱効果は長期間(10年以上※2)持続可能。コスパの高い断熱素材です。
※1 理想科学工業㈱霞ヶ浦工場の実例を元に、イメージ表示し得られたデータを元に室内空間の温度上昇を抑制することから、空調設備の温度を上げることで電気代等の削減が期待できます。
※2 クールサーム®の実証実験にて10年以上の耐久性を確認しています。詳しくは弊社スタッフまでお問い合わせください
SAWAMURAについて
1950年の創業以来、地域に貢献すること、お客様の事業の発展に寄与することを目標に
さまざまな建築物を竣工してきました。1998年よりシステム建築事業をスタート。
豊富な経験と実績をもとに、さまざまなご要望にお応えします。

関西No.1のシステム建築実績。
積み重ねた施工実績とノウハウで、
確かな精度を保証します。
- 2020年
- 関西ブロック優秀ビルダー賞1位
- 2019年
- 関西ブロック優秀ビルダー賞3位
関西ブロック年間販売実績 第1位 5年連続受注賞
アティブビルダー銀賞受賞 - 2018年
- 関西ブロック年間販売実績 第3位 5年連続受注賞
アクティブビルダー銅賞受賞 - 2017年
- アクティブビルダー銅賞受賞
- 2016年
- アクティブビルダー銅賞受賞
- 2015年
- アクティブビルダー 銅賞受賞
- 2012年
- 連続販売年数15年達成
- 2013年
- 15年連続受注賞
- 2008年
- 10年連続受注賞 2005年 5年連続受注賞
- 2004年
- 優秀ビルディング
資格所有者
-
一級建築士 13人
二級建築士 41人
一級建築施工管理技士 29人
一級土木施工管理技士 10人 -
宅地建物取引士 19人
設備設計一級建築士 1人
土地家屋調査士 1人
一級建設業経理士 2人
中小企業診断士 1人
会社概要
| 社名 | 株式会社澤村 |
|---|---|
| 本社 | 〒520-1121 滋賀県高島市勝野1108番地3 TEL. 0740-36-0130(代) FAX. 0740-36-1661 |
| 大津オフィス | 〒520-0242 滋賀県大津市本堅田三丁目33-16 エルミナ リアン 2F TEL. 077-572-3879 FAX. 077-573-8384 |
| 敦賀オフィス | 〒914-0811 福井県敦賀市中央町一丁目8-10 TEL. 0770-22-6005 FAX. 0770-47-6405 |
| 資材センター | 滋賀県高島市勝野873-1 |
| 創業 | 昭和25年12月6日 |
| 資本金 | 50,000,000円(グループ全体) |
| 従業員数 | 182名(グループ全体)※2024年10月1日現在 |
| 売上高 | 63億円(グループ全体)※2024年9月実績 |
| 営業種目 | 建築一式、土木一式、大工工事、水道施設工事、とび・土工工事、造園工事、左官工事、石工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、熱絶縁工事、建具工事、宅地建物取引業、建築・土木設計、土地活用 |
| 許可・登録 | 〈建設業許可〉 滋賀県知事許可(特・般-3) 第80123号 〈一級建築士事務所〉 滋賀県知事登録(カ) 第126号 〈宅地建物取引業者〉 滋賀県知事登録(12) 第1267号 |
| 取引銀行 | 滋賀銀行 高島支店 関西みらい銀行 安曇川支店 滋賀県信用組合 安曇川支店 |
| 関連会社 | 株式会社トータル・オーガニック・プランニング 沢村ホーム株式会社 |
人気記事
工場・倉庫建築について
どうぞ、お気軽にお問い合わせください。
- これから計画を始める方
- おおよその予算やスケジュールが知りたい方
- 敷地調査や提案を希望される方




