物流倉庫の火災はなぜ起こる?原因と対策を過去の事例から解説
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物流倉庫の火災は、事業の継続に深刻な影響を及ぼす重大なリスクです。 一度発生すると、保管している商品や建物だけでなく、取引先からの信用も失いかねません。
この記事では物流倉庫で火災が起こる主な原因と、被害が拡大しやすい理由を解説します。 過去の事例から得られる教訓をもとに、明日から実践できる具体的な防火対策についても分かりやすく説明します。
近年、物流倉庫で火災が多発している現状
EC市場の拡大に伴い、物流倉庫は大規模化・高層化が進む傾向にあります。一方で、消防白書データによると、倉庫火災の発生件数は2000年から2020年の間に減少傾向にあり、約40%減少しています。しかし、ひとたび火災が発生すれば、大規模な倉庫では鎮火に数日を要するケースも少なくありません。
事業停止による経済的損失はもちろん、近隣住民への影響も懸念されます。こうした状況を踏まえ、自社の倉庫における防火管理体制を改めて見直し、潜在的なリスクを洗い出すことが急務となっています。
物流倉庫で火災が発生する主な4つの原因
物流倉庫の火災原因は多岐にわたりますが、主なものとして4つに大別できます。 電気設備の不具合、フォークリフトなどの作業機械からの出火、保管荷物の自然発火、そして人的な要因です。
これらの原因は単独で発生することもあれば、複数が絡み合って火災に至る場合もあります。 それぞれの原因がどのようなメカニズムで火災につながるのかを正確に理解し、特性に応じた対策を講じることが防火管理の第一歩となります。
電気設備の老朽化や配線トラブルからの出火
物流倉庫における火災の原因は多岐にわたりますが、電気設備もその一つとして挙げられます。コンセントに蓄積した埃が湿気を帯びて発火するトラッキング現象や、許容量を超えた配線による過熱、ネズミなどによる配線の損傷が具体的な出火要因となることがあります。また、工事作業中の出火、荷物の自然発火、タバコの不始末、放火なども倉庫火災の主な原因として挙げられます。
過去の事例では、2017年に発生したアスクルの大規模火災では、廃棄ダンボール置き場が火元と見られており、初期消火の失敗や通報の遅れ、防火シャッターの閉鎖不全などが大規模化の原因と指摘されています。また、2021年の大阪の物流センター火災は、放火が原因で発生したと発表されています。電気系統のトラブルが原因とみられる火災も報告されており、2019年にはマルハニチロ物流の冷凍冷蔵倉庫で溶接作業中の「迷走電流」が原因とみられる火災が発生し、犠牲者も出ています。
事務所や休憩室はもちろん、倉庫内の照明や充電設備など、全ての電気設備に対して定期的な点検と清掃を行い、老朽化した配線や機器は計画的に更新することが不可欠です。
フォークリフトの整備不良や作業中の引火
倉庫内で稼働するフォークリフトも、火災の発生源となる可能性があります。 バッテリーのショートやエンジンの過熱、燃料漏れなどが直接的な出火原因です。 特に、日々の点検や定期的なメンテナンスを怠ると、部品の劣化や配線の損傷に気づかず、重大な事故を引き起こしかねません。
また、フォークリフトの周囲に段ボールなどの可燃物が散乱している状態で作業を行うと、エンジンから発生する火花が引火する危険もあります。 万が一の火災に備え、車両の整備計画を確実に実行するとともに、適切な賠償責任保険や火災保険に加入し、事業継続のリスクを管理することも重要です。
保管されている荷物が自然に発火する危険性
火の気がない場所でも、保管されている荷物そのものが原因で火災が発生することがあります。これを自然発火と呼び、動植物油が付着した布や紙、石炭、ゴム製品、肥料などが、酸化反応によって発生した熱を内部に溜め込むことで起こります。
特に、これらの物質が密集して積み上げられていると、熱が逃げにくくなり、発火点に達しやすくなります。危険物だけでなく、一見すると安全に思える荷物でも自然発火のリスクは潜んでいます。荷物の特性を十分に理解し、通気性を確保した保管方法を徹底することや、倉庫内の温度・湿度を適切に管理することが求められます。
従業員によるタバコの不始末や放火
人的な要因による火災も後を絶ちません。 最も多いのが、従業員によるタバコの不始末です。 決められた喫煙所以外での喫煙や、吸い殻の不完全な消火が、近くにある可燃物へ燃え移ることで火災に発展します。 これを防ぐには、喫煙ルールを厳格に定め、従業員全員に周知徹底させることが基本となります。
さらに、意図的な放火という犯罪のリスクも考慮しなければなりません。 部外者の侵入を防ぐためのセキュリティ対策や、防犯カメラの設置、従業員の入退室管理の徹底は、盗難防止だけでなく放火対策としても有効に機能します。
物流倉庫の火災で被害が拡大しやすい理由
物流倉庫で一度火災が発生すると、被害が甚大になりやすい傾向があります。 その背景には、倉庫特有の構造や保管状況が深く関わっています。
内部に可燃物が高密度で存在すること、広大な空間が初期消火を困難にすること、そして防火設備が正常に機能しないケースがあること。 これらの要因が複合的に作用し、火の回りを早め、鎮火を著しく困難にさせるのです。
段ボールや梱包材など可燃物が密集している
物流倉庫は、その機能上、非常に燃えやすいものが大量に保管されている空間です。 商品の梱包に使われる段ボール、プラスチック製の緩衝材、包装用のフィルムやビニール、伝票などの紙類は、どれも着火しやすく、一度燃え始めると強い火勢で燃え広がります。 これらの可燃物が、ラックなどに高密度で立体的に保管されているため、火は上下左右へと瞬く間に延焼していきます。
建物の構造が不燃性であっても、内部に可燃物が密集している限り、火災のリスクは常に高い状態にあると認識し、消防設備の維持管理を徹底する必要があります。
広大な空間が初期消火の遅れにつながる
倉庫の多くは、荷物の搬入やフォークリフトの作業効率を考慮し、柱が少なく天井の高い広大な一室空間として設計されています。 この構造は、火災発生時には煙や熱が急速に拡散する原因となります。 煙が充満することで火元の特定が困難になり、視界が悪化して避難や初期消化活動の妨げとなります。 また、天井が高いと熱気や煙が上部に滞留するため、天井に設置された火災感知器の作動が遅れる可能性も指摘されています。
発見の遅れは、消火器などで対応できる初期消火のタイミングを逃すことにつながり、被害の拡大を招きます。
防火シャッターが荷物で正常に作動しない
建築基準法や消防法では、倉庫の規模に応じて、火災の延焼を防ぐために「防火区画」を設けることが義務付けられています。 防火シャッターや防火戸は、この防火区画を形成するための重要な設備です。 火災を感知すると自動的に閉鎖し、火や煙を一定時間閉じ込める役割を果たします。
しかし、日常の作業効率を優先するあまり、シャッターの下や可動範囲内に荷物や台車を置いてしまうケースが散見されます。 これでは、いざという時にシャッターが完全に閉鎖せず、延焼を防ぐという本来の機能を全く発揮できません。 防火設備の周辺を常にクリアに保つ意識付けが極めて重要です。
過去の火災事例から学ぶべき教訓とは
過去に発生した数々の大規模倉庫火災は、私たちに多くの貴重な教訓を残しています。 それぞれの事例を詳細に分析すると、出火原因や被害拡大の要因には共通点が見られます。 例えば、電気設備の点検不備や、防火区画の機能不全、初期消火体制の欠如などです。 これらの教訓は、自社の防災体制を見直す上での重要な指標となります。
他社の事例を対岸の火事と捉えるのではなく、自社でも起こりうると想定し、具体的な対策に結びつけることが、未来の火災を防ぐために不可欠です。
物流倉庫の火災を未然に防ぐための具体的な対策
物流倉庫の火災リスクを低減させるためには、消防設備の維持管理といったハード面の対策と、従業員への教育や日々の運用ルールといったソフト面の対策を両輪で進める必要があります。 どれか一つだけを徹底しても十分な効果は得られません。
建築的な知識と現場の運用実態を踏まえ、自社の状況に合わせた多角的な防火対策を計画的かつ継続的に実行していくことが、安全な倉庫運営の基盤を築きます。
スプリンクラーなど消防用設備の定期点検を徹底する
スプリンクラー設備や自動火災報知設備、消火器、屋内消火栓といった消防用設備は、火災の初期段階で被害を最小限に食い止めるための最後の砦です。 これらの設備が、いざという時に確実に作動するよう、消防法で定められた定期的な点検を専門業者に依頼し、必ず実施しなければなりません。
点検で指摘された不具合は、決して放置せずに速やかに改修する体制を構築しておくことが求められます。 また、管理者や従業員自身も、消火器の設置場所や基本的な使用方法を日頃から確認し、緊急時に慌てず行動できるように備えておくことが重要です。
漏電やショートを防ぐ電気設備の保守管理を行う
火災原因の上位を占める電気設備については、特に重点的な保守管理が必要です。 専門の業者による定期的な点検を受け、配線の絶縁状態や機器の劣化状況を確認します。 日常の管理としては、コンセントや分電盤の周辺に埃が溜まらないように定期的に清掃する、タコ足配線をしない、損傷したコードは使用しないといった基本的なルールを全従業員で徹底します。
近年利用が増えている電動フォークリフトや無人搬送車(AGV)のリチウムイオン電池は、充電方法を誤ると火災リスクがあるため、充電エリアの周囲には可燃物を置かないなど、専用の管理体制を構築することが望ましいです。
喫煙ルールを厳格化し火の元の管理を徹底する
タバコの不始末による火災は、基本的なルール遵守で防げる人為的なミスです。 対策の第一歩は、喫煙場所を明確に指定し、それ以外の場所では一切の喫煙を禁止することです。 指定された喫煙場所は、建物の外部や延焼の危険がない区画に設置し、必ず水を入れた金属製の吸殻入れなど、安全に消火できる設備を設けます。
また、従業員だけでなく、トラックの運転手や協力会社のスタッフなど、倉庫に出入りするすべての人にこのルールを周知し、遵守させるための仕組み作りも欠かせません。 火気の使用に関するルール全体を見直し、火の元の管理を徹底します。
万が一に備えて従業員への避難訓練を定期的に実施する
どれだけ優れた設備を備えていても、それを使うのは人です。 火災発生時に従業員が冷静かつ迅速に行動できなければ、人命に関わる事態や被害の拡大につながります。 そのため、定期的な避難訓練の実施は不可欠です。
火災発生を想定し、初期消火の手順、消防への通報連絡、そして安全な避難経路の確認などを、実際に体を動かして繰り返し訓練します。 夜間や休日など、人員が少ない時間帯を想定した訓練も有効です。 訓練を通じて防災意識を高め、一人ひとりが自分の役割を理解することで、組織全体の防災能力が向上します。
防火区画を確保するため常に整理整頓を心がける
防火シャッターや防火戸の周辺に荷物を置かないことは、法令遵守であると同時に、延焼拡大を防ぐための極めて重要なルールです。 日々の業務の中で、「少しだけなら」という気の緩みが、いざという時に致命的な結果を招きます。 シャッターの下を示す床のラインの内側には、いかなるものも置かないというルールを絶対のものとして徹底させます。
これは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけを基本とする「5S活動」の一環としても捉えられます。 通路や階段、避難口の周りに障害物を置かないことも含め、日常的な整理整頓が、結果的に安全な職場環境と防火対策の基礎を築きます。
まとめ
物流倉庫の火災は、電気設備の不備、作業機械のトラブル、荷物の特性、人的要因など、多様な原因によって引き起こされます。 また、倉庫特有の構造や大量の可燃物の存在が、一度発生した火災の被害を拡大させる要因となります。
これらのリスクに対処するためには、消防設備の定期点検や電気設備の保守管理といったハード面の対策に加え、従業員への教育訓練や整理整頓の徹底といったソフト面の対策を継続的に実施することが不可欠です。 自社の防火管理体制を総合的に見直し、具体的な改善策を実行することが求められます。
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