倉庫の排煙設備を解説!

最終更新日:
倉庫の排煙設備を解説!
倉庫に設置される排煙設備は、火災が発生した際に生じる煙を建物の外へ排出する重要な役割を担っています。建物の用途や規模によって必要な設備が異なるため、適切な排煙設備の設置は防火対策の要といえます。
排煙設備とは?火災時の煙を外部に排出する重要な役割
排煙設備とは、火災が発生した際に生じる煙を建物外へ排出することで、避難する人々の安全な視界を確保し、一酸化炭素中毒などの危険から身を守るための重要な設備です。建築基準法においても設置が義務付けられており、特に施行令第126条の2において詳細な設置基準が定められています。この設備は、火災時の人命救助において極めて重要な役割を担っており、その適切な設置と維持は建物の安全性を高める上で不可欠です。
【建築基準法】倉庫に排煙設備の設置が義務付けられる条件
倉庫に排煙設備を設置する義務は、建築基準法によって定められており、特定の条件に該当する場合に必要とされます。特に、法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げられる特殊建築物で延べ面積が500㎡を超える場合、排煙設備の設置が義務付けられています。これは、火災発生時に建物内の煙を外部へ排出し、利用者の避難経路を確保するために非常に重要です。倉庫の用途や規模によっては、これらの条件を細かく確認し、適切な排煙設備を導入することが求められます。
法別表第1い欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物について
法別表第1い欄(1)項から(4)項までに掲げられる特殊建築物とは、不特定多数の人が利用する建物や、火災が発生した場合に避難が困難になる可能性のある建物などが該当します。具体的には、劇場や映画館などの集会場(1項)、病院やホテルなどの宿泊施設や福祉施設(2項)、学校や体育館などの教育・運動施設(3項)、百貨店や飲食店などの物品販売業を営む店舗や遊技場(4項)などがこれにあたります。これらの建築物は、建築基準法において排煙設備の設置が義務付けられる対象となるため、適切な防火対策が求められます。
延べ面積が500㎡を超える特殊建築物の場合
延べ面積が500㎡を超える特殊建築物に該当する場合、建築基準法別表第1に掲げられている用途の建物には排煙設備の設置が必要です。具体的には、この面積には共用廊下や共用階段も含まれており、共同住宅の居室、廊下、集会室、車庫など、建築物全体に対して排煙設備を設置しなければなりません。また、共同住宅と事務所のような複合用途の建築物では、それぞれの用途の面積を合算して500㎡を超えるかどうかを判断する必要があるため注意が必要です。ただし、すべての特殊建築物が対象となるわけではなく、原則として人が利用する特殊建築物のみに適用される規定となります。
床面積の合計が500㎡を超える階がある場合
倉庫全体ではなく、3階以上の階で床面積の合計が500㎡を超える場合も排煙設備の設置義務が生じます。この場合、その階にある居室が対象となります。ただし、高さ31m以下の部分にある居室で、床面積100㎡以内ごとに防煙壁によって区画されている場合は、排煙設備の設置が免除されることがあります。防煙壁は、天井面から50cm以上下方に突出した垂れ壁や、これらと同等以上の煙の流動を妨げる効力のある不燃材料で造られ、または覆われたものである必要があります。この免除規定は、特殊建築物かどうかにかかわらず適用されるため、事務所などの特殊建築物ではない建物でも、大規模であれば排煙設備を検討する際に重要なポイントとなります。
排煙上の無窓居室がある場合
排煙上の無窓居室とは、建築基準法施行令第116条の2第1項第2号に定める窓や開口部を持たない居室のことです。この場合、一部の居室にのみ排煙設備の設置が義務付けられることがあります。ただし、建築基準法施行令第116条の2第1項第2号における「窓その他の開口部を有しない居室」の検討と、同法第126条の2における排煙設備の検討は、内容が異なるため注意が必要です。詳細な検討方法については、専門家への相談をおすすめします。
倉庫で排煙設備の設置が免除される主なケース
倉庫に排煙設備は原則として設置が義務付けられていますが、実はその設置が免除されるケースが多く存在します。これらの免除規定を適切に活用することで、不必要な設備の設置を避け、コストを削減することも可能です。ただし、免除規定の適用には細かな条件があるため、正確な判断が求められます。ここでは、排煙設備の設置が免除される主なケースについて詳しく解説します。
主要構造部が不燃材料で作られている倉庫
主要構造部が不燃材料で作られている倉庫は、火災が発生しても延焼が拡大する可能性が低いため、排煙設備の設置が免除されるケースがあります。具体的に不燃材料とはコンクリート、レンガ、瓦、金属板、ガラスなどが挙げられます。これらの倉庫は、火災による危険性が低いと判断されるため、排煙設備が不要となるのです。ただし、これは主要構造部が不燃材料で造られている場合に限られ、その他の条件によっては排煙設備が必要となることもありますので注意が必要です。
不燃性の物品のみを保管する倉庫
機械製作工場や不燃性の物品を保管する倉庫は、万が一火災が発生しても火災が広がる可能性が低いと判断されるため、排煙設備の設置が免除される場合があります。これは、火災が初期消火や避難誘導で対応できるという前提に基づいています。そのため、保管する物品は不燃性であることが前提となり、機械製作工場で『機械を』製作する施設もこれに該当します。その他、生鮮食料品の卸売市場など、これらに類似する建築物も排煙設備の設置が不要となるケースがあります。
100㎡以内の防煙区画で区切られている場合
法別表第1(い)欄(2)項の特殊建築物で100㎡以内に区画されている場合、または共同住宅の住戸で200㎡以内に区画されている場合は、排煙設備の設置が免除されます。また、学校、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場といった用途の建築物も免除の対象です。さらに、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、その他これらに類する部分も同様に排煙設備の設置が不要とされています。これらの規定は、火災時の煙の拡散を一定の範囲に抑えることができる構造であるため、排煙設備の必要性が低いと判断される場合を想定しています。
避難安全検証法で安全性が確認された場合
避難安全検証法とは、建物の避難安全性能を評価する手法の一つで、この検証によって安全性が確認された場合は、排煙設備の設置が免除されることがあります。これは、建築基準法で定められた排煙設備の規定に対して、避難の安全性を科学的に検証することで、同等以上の安全性が確保されていると判断されるためです。建物の設計段階でこの検証法を適用することにより、排煙設備の設置に伴うコストやスペースの確保といった負担を軽減できる可能性があります。詳細な検証方法や適用条件については、専門家への相談が不可欠です。
排煙設備の種類とそれぞれの設置基準
排煙設備は大きく分けて自然排煙設備と機械排煙設備の2種類があります。これらの設備は、それぞれ異なる設置基準が設けられており、建物の構造や用途、規模によって適切な方式を選択する必要があります。特に、排煙口の有効面積や設置位置、排煙機の排煙能力などは、建築基準法によって詳細に定められているため、これらの基準を正確に理解し、適切に設計・設置することが重要です。
窓から煙を逃がす「自然排煙方式」の基準
自然排煙方式は、火災時に発生する煙が上昇する性質を利用し、建物の窓や開口部から外部へ煙を排出する仕組みです。電力を使用しないため、停電時でも機能するという利点があります。しかし、外部の風向きや室内の温度差によって排煙効果が左右されるため、屋外に面した部屋や空間に主に採用されます。
自然排煙設備を設置する際には、建築基準法で定められたいくつかの基準を満たす必要があります。まず、排煙口の構造は、煙に触れる部分を不燃材料で造り、天井または壁の上部、具体的には天井から80cm以内の高さに設けることが求められます。 また、排煙口は閉鎖状態を保持し、開放時には気流で閉鎖されない構造でなければなりません。
さらに、防煙区画の各部分から排煙口までの水平距離を30m以下とし、排煙口の有効開口面積は、防煙区画の床面積の1/50以上を確保する必要があります。 排煙口の手動開放装置は、床面から80cm以上1.5m以下の高さに設置し、使用方法を明示することが義務付けられています。
防煙壁による防煙区画の設置方法
防煙壁とは、火災が発生した際に煙を遮るための設備で、天井から50cm以上の垂れ壁として設置されます。自然排煙設備においては、排煙のための開口部を、この防煙壁の上部までしか設けることはできません。原則として天井から50cm以上の高さが必要ですが、「防煙垂れ壁30cm」と「常時閉鎖または随時閉鎖の不燃扉」を組み合わせることで、30cmまで短くすることが可能です。この緩和措置は、防火避難規定の解説2023という書籍に記載されており、排煙設備の設計において重要な情報源となります。
排煙口(排煙窓)の有効面積と設置位置
排煙口や排煙窓の有効面積は、防煙区画の床面積の50分の1以上と建築基準法で定められています。この有効面積は、排煙口の中心から防煙区画内の最も遠い地点までの水平距離が30メートル以内となるように設定する必要があります。また、排煙口は、天井または壁の上部から80cm以内の高さに設置することが求められます。地域によっては、防煙区画を細分化することで排煙口までの距離を緩和する特例を設けている場合があるため、事前に確認することが重要です。
手動開放装置の設置ルール
手動開放装置は、排煙窓を手動で開けるためのスイッチであり、排煙口の近くに設置することが求められています。建築基準法では、床面から80cm以上1.5m以下の高さに設置する必要があると定められています。引き違い窓を排煙窓として設計する場合、クレセントが手動開放装置とみなされるため、クレセントの設置高さもこの範囲内に収める必要があります。具体的な運用については、自治体によって異なる場合があるため、各地域の建築基準法ハンドブックなどを確認することが重要です。
ファンで強制的に排煙する「機械排煙方式」の基準
機械排煙方式とは、動力を用いた排煙機(ファン)によって強制的に煙を排出する仕組みです。この方式は、自然排煙が困難な建物内部や、大規模な空間において有効に機能します。建築基準法では、排煙機の排煙能力や排煙口・給気口の設置位置について、厳格な基準が設けられています。これらの基準を遵守することで、火災発生時に効率的に煙を排出し、避難経路の安全を確保することが可能です。
排煙機の排煙能力の計算方法
機械排煙方式における排煙機の排煙能力は、火災時に発生する煙を効率的に排出するために重要な要素です。建築基準法では、1分間に120m³以上の排煙能力を有すること、さらに防煙区画の床面積1m²につき1m³の空気を排出する能力が必要と定められています。2つ以上の防煙区画を受け持つ排煙機の場合は、最大の防煙区画の床面積1m²につき2m³の排出能力が求められます。
これらの計算に加えて、実務では安全マージンとして余裕率を考慮することが一般的です。余裕率は1.1~1.3の範囲で設定され、通常は1.2が使用されます。
また、電源を必要とする排煙設備には、停電時でも機能する予備電源の設置が義務付けられています。 予備電源は、自動充電装置や時限充電装置を備えた蓄電池、または自家用発電装置などが該当し、常用電源が遮断された際に自動的に切り替わる構造が必要です。
排煙口と給気口の設置要件
機械排煙方式における排煙口と給気口の設置要件は、煙の排出効果を最大限に高めるために重要です。排煙口は防煙区画の各部分から水平距離で30m以内に配置し、閉鎖状態を保ちつつ、開放時には気流の影響を受けない構造であることが求められます。また、煙に接する部分は不燃材料で造り、天井または壁の上部80cm以内の高さに設置する必要があります。給気口は排煙口とは異なる防煙区画に設け、床面から80cm以下の位置に設置しなければなりません。これにより、新鮮な空気を効率的に供給し、排煙を促進します。
まとめ
排煙設備の設置は、建物の種類や規模、用途によって義務付けられる場合と免除される場合があります。法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げられる特殊建築物で延べ面積が500m²を超える場合や、階数が3以上で延べ面積が500m²を超える建築物は、非居室を含む建物全体に排煙設備が必要です。しかし、主要構造部が不燃材料で造られている倉庫や不燃性の物品のみを保管する倉庫など、特定の条件を満たす場合は免除されるケースもあります。自然排煙方式と機械排煙方式があり、それぞれ設置基準が異なるため、建物の状況に応じた適切な設備を選定することが重要です。
工場・倉庫の暑さ対策に『クールサーム®』

屋根に塗るだけで空調代を削減!※1
可視光線、近赤外線のほとんどを反射し、また一部吸収した太陽エネルギーを遠赤外線として放散、さらに遮断層を作り熱伝導を防ぐ、といった特性を持つNASAが開発した特殊なセラミックで屋根や壁面を塗装。劣化の原因となる紫外線もカットして、断熱効果は長期間(10年以上※2)持続可能。コスパの高い断熱素材です。
※1 理想科学工業㈱霞ヶ浦工場の実例を元に、イメージ表示し得られたデータを元に室内空間の温度上昇を抑制することから、空調設備の温度を上げることで電気代等の削減が期待できます。
※2 クールサーム®の実証実験にて10年以上の耐久性を確認しています。詳しくは弊社スタッフまでお問い合わせください
SAWAMURAについて
1950年の創業以来、地域に貢献すること、お客様の事業の発展に寄与することを目標に
さまざまな建築物を竣工してきました。1998年よりシステム建築事業をスタート。
豊富な経験と実績をもとに、さまざまなご要望にお応えします。

関西No.1のシステム建築実績。
積み重ねた施工実績とノウハウで、
確かな精度を保証します。
- 2020年
- 関西ブロック優秀ビルダー賞1位
- 2019年
- 関西ブロック優秀ビルダー賞3位
関西ブロック年間販売実績 第1位 5年連続受注賞
アティブビルダー銀賞受賞 - 2018年
- 関西ブロック年間販売実績 第3位 5年連続受注賞
アクティブビルダー銅賞受賞 - 2017年
- アクティブビルダー銅賞受賞
- 2016年
- アクティブビルダー銅賞受賞
- 2015年
- アクティブビルダー 銅賞受賞
- 2012年
- 連続販売年数15年達成
- 2013年
- 15年連続受注賞
- 2008年
- 10年連続受注賞 2005年 5年連続受注賞
- 2004年
- 優秀ビルディング
資格所有者
-
一級建築士 13人
二級建築士 41人
一級建築施工管理技士 29人
一級土木施工管理技士 10人 -
宅地建物取引士 19人
設備設計一級建築士 1人
土地家屋調査士 1人
一級建設業経理士 2人
中小企業診断士 1人
会社概要
社名 | 株式会社澤村 |
---|---|
本社 | 〒520-1121 滋賀県高島市勝野1108番地3 TEL. 0740-36-0130(代) FAX. 0740-36-1661 |
大津オフィス | 〒520-0242 滋賀県大津市本堅田三丁目33-16 エルミナ リアン 2F TEL. 077-572-3879 FAX. 077-573-8384 |
敦賀オフィス | 〒914-0811 福井県敦賀市中央町一丁目8-10 TEL. 0770-22-6005 FAX. 0770-47-6405 |
資材センター | 滋賀県高島市勝野873-1 |
創業 | 昭和25年12月6日 |
資本金 | 50,000,000円(グループ全体) |
従業員数 | 182名(グループ全体)※2024年10月1日現在 |
売上高 | 63億円(グループ全体)※2024年9月実績 |
営業種目 | 建築一式、土木一式、大工工事、水道施設工事、とび・土工工事、造園工事、左官工事、石工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、熱絶縁工事、建具工事、宅地建物取引業、建築・土木設計、土地活用 |
許可・登録 | 〈建設業許可〉 滋賀県知事許可(特・般-3) 第80123号 〈一級建築士事務所〉 滋賀県知事登録(カ) 第126号 〈宅地建物取引業者〉 滋賀県知事登録(12) 第1267号 |
取引銀行 | 滋賀銀行 高島支店 関西みらい銀行 安曇川支店 滋賀県信用組合 安曇川支店 |
関連会社 | 株式会社トータル・オーガニック・プランニング 沢村ホーム株式会社 |
人気記事
工場・倉庫建築について
どうぞ、お気軽にお問い合わせください。
- これから計画を始める方
- おおよその予算やスケジュールが知りたい方
- 敷地調査や提案を希望される方