倉庫における換気の必要性|必要換気量の求め方や換気がもたらす効果、具体的な手段について解説
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倉庫における換気は、保管物の品質維持や作業環境の改善、さらには法的な要件を満たすためにもその必要性は非常に高いと言えます。適切な換気量を確保することで、カビや結露の発生を抑え、従業員の健康を守り、快適な作業空間を作り出すことが可能です。この記事では、倉庫に換気が必要な理由から、換気がもたらす具体的な効果、必要換気量の計算方法、そして効率的な換気方法までを網羅的に解説し、読者の皆様が自身の倉庫に最適な換気計画を立てる一助となることを目指します。
倉庫に換気が必要な理由
倉庫に換気が必要な理由は多岐にわたります。単に空気を入れ替えるというだけでなく、保管している物品の品質維持、作業員の健康確保、さらには法律で定められた基準への適合といった必要性があります。特に日本の建築基準法では、居室に対して換気に関する規定が設けられており、倉庫であっても用途によってはこの業法が適用される場合があります。
なぜ倉庫の換気が重要なのか
倉庫における換気の必要性は、保管物の保護と作業環境の安全性確保に直結しています。倉庫は外部環境と隔絶されがちなため空気が滞留しやすく、湿気や有害物質がこもりやすい空間です。適切な換気は、室内の空気環境を良好に保ち、カビや結露の発生を抑制し、保管物の劣化を防ぐ上で非常に重要です。また、作業員が安全かつ快適に業務を行うためにも新鮮な空気の供給は欠かせません。建築基準法においても、特定の条件下では換気設備の設置が義務付けられており、法令遵守の観点からも換気は重要視されています。
換気をしない場合に起こりうる問題
倉庫の換気を怠ると、様々な問題が発生する可能性があります。まず、湿気がこもりやすくなり、カビや結露が発生し、保管している物品の品質低下を招きます。特に食品や衣類、精密機器などのデリケートな物品は影響を受けやすいです。また、空気中の汚染物質や有害物質が滞留し、作業員の健康被害を引き起こすリスクも高まります。さらに、臭いがこもり、不快な作業環境となるほか、冷凍倉庫や冷蔵倉庫では適切な温度・湿度が維持できず、保管物の劣化や品質変質に繋がりかねません。物流倉庫においては、これらの問題が発生すると、入出庫作業や在庫管理にも支障をきたし、業務効率の低下や損害発生に繋がる可能性も考えられます。
法律による換気の規定
日本の建築基準法では、居室に対し換気に関する規定が設けられています。居室とは、居住、作業、娯楽などの目的で継続的に使用する部屋を指し、一般的な倉庫は物品保管が主目的のため、基本的には「非居室」と見なされ、建築基準法上の換気設備の設置義務は課されません。しかし、倉庫内に事務所や作業スペースが併設されている場合は、その部分が居室と見なされ、床面積に応じた窓の設置、または換気設備の設置が必要となります。また、特定の業法や条例によって、扱う物品の種類や倉庫の用途に応じた換気に関する基準が別途定められている場合があるため、関係法令の確認が重要です。
換気がもたらす効果
倉庫における適切な換気は、多岐にわたるメリットをもたらします。適切な換気量を確保し、定期的な空気の入れ替えを行うことで、倉庫内の環境は大きく改善されます。これにより、保管物の状態を良好に保ち、作業員の健康と安全を守り、効率的な倉庫運営に繋がります。
室温と湿度の調整
倉庫において適切な換気を行うことは、室温と湿度の効果的な調整に繋がります。換気によって外部の空気を取り込み、内部の空気と入れ替えることで、室内にこもった熱や湿気を排出し、温度や湿度の偏りを解消できます。特に温度管理が重要な冷凍倉庫や冷蔵倉庫では、結露の発生を抑制し、設定温度・湿度を安定して維持するために換気が不可欠となります。これにより、保管物の品質劣化を防ぎ、適切な環境管理を実現します。
保管物の品質維持
倉庫における換気は、保管物の品質維持に不可欠です。適切な換気によって湿度の上昇を抑え、カビや結露の発生を防ぐことができます。特に食品や衣類、精密機器などの湿気に弱い物品や、冷凍・冷蔵が必要な生鮮品や医薬品などの物流においては、温度・湿度の管理が品質を大きく左右するため、計画的な換気が求められます。換気によって空気を循環させることで、保管物への臭い移りを防ぐ効果も期待できます。
感染症の予防
倉庫での適切な換気は、感染症予防に有効な手段の一つです。特に多くの人が作業する物流倉庫などでは、空気が滞留しやすい環境において、ウイルスや細菌が空気中に浮遊しやすくなります。定期的な換気により室内の空気を新鮮な外気と入れ替えることで、空気中の汚染物質や病原体の濃度を希釈し、感染リスクを低減できます。厚生労働省も推奨するように、一人あたりに必要な換気量を確保することは、密閉空間を避ける上で重要な対策となります。
臭気対策
倉庫内にこもる様々な臭気対策として、換気は有効な手段です。保管している物品自体が発生する臭いや、建物構造材に染み付いた臭いなど、倉庫には特有の臭気が存在する場合があります。例えば、タイヤのようなゴム臭や、魚介類のような生臭さなどが挙げられます。これらの臭いは空気の流れが滞留すると、梱包材や建物自体に染み付き、作業環境の悪化や保管物への臭い移りの原因となります。換気によって継続的に空気を入れ替えることで、倉庫内の臭気を排出し、臭いの定着を防ぎ、快適な作業環境を維持できます。
火災リスクの低減
倉庫における適切な換気は、火災リスクの低減にも繋がります。特に危険物を保管する倉庫では、可燃性の蒸気やガスが発生・滞留する可能性があります。換気によってこれらの物質を効果的に排出し、濃度が危険域に達するのを防ぐことは、引火や爆発のリスクを大幅に低減させます。また、換気による室温上昇の抑制も、一部の物質の自然発火を防ぐ上で重要な役割を果たします。危険物を取り扱う倉庫においては、消防法に基づいた換気設備の設置が義務付けられており、火災予防の観点から換気は非常に重要な設備となります。
必要換気量の計算方法
倉庫に必要な換気量は、その用途や保管物、あるいは在室する人員によって算出方法が異なります。適切な換気量を把握し、必要な換気設備を設置することは、倉庫の良好な環境維持に不可欠です。ここでは、必要換気量を計算するための基本的な考え方と、いくつかの計算方法について解説します。
必要換気量とは
必要換気量とは、倉庫内の空気環境を衛生的に、あるいは安全に保つために必要な、1時間あたりに供給すべき新鮮な外気の量のことです。これは、室内に発生する汚染物質の濃度を許容範囲内に維持するために必要な換気量であり、主に建物の用途や在室人数、発生する汚染物質の種類と量に基づいて計算されます。必要換気量は、単位時間あたりに空間の空気が入れ替わる回数を示す必要換気回数としても捉えることができ、この値を基に適切な換気設備を選定したり、換気計画を立てたりすることが重要となります。
計算方法の種類
必要換気量の計算方法にはいくつかの種類があり、倉庫の用途や状況に応じて適切な方法を選択します。主な計算方法としては、室内の汚染物質の発生量とその許容濃度に基づいて算出する方法、あるいは部屋の容積に対して1時間あたりに空気を入れ替える回数(換気回数)を基に算出する方法があります。また、オフィスや人が多く滞在する場所では、在室する人員数を考慮して換気量を計算する場合もあります。これらの計算方法を理解し、倉庫の特性に合った算出を行うことが、適切な換気計画に繋がります。
汚染物質の濃度による計算
汚染物質の濃度による必要換気量の計算は、室内の汚染物質発生量、外気の汚染物質濃度、そして室内の許容汚染物質濃度を用いて行われます。この計算式は一般的にQ=M/(C-C₀)で表され、Qが必要換気量、Mが汚染物質の発生量、Cが室内の許容汚染物質濃度、C₀が外気の汚染物質濃度を示します。例えば、室内の二酸化炭素濃度を建築物環境衛生管理基準値である1000ppm以下に維持するために必要な換気量を計算する場合などに用いられます。この方法は、特定の汚染物質対策として有効な換気量を算出するのに適しています。
換気回数による計算
換気回数による必要換気量の計算は、室内の容積と換気回数を乗じることで行われます。計算式は一般的にQ=N×Vで表され、Qが必要換気量、Nが換気回数(1時間あたりに空気が入れ替わる回数)、Vが部屋の容積(床面積×天井高)を示します。例えば、倉庫の換気回数を5回/hと設定した場合、その容積に応じて必要な換気量が決まります。この方法は、特定の汚染物質の発生量が明確でない場合や、一般的な空気の入れ替えを目的とする場合に用いられることがあります。換気回数は部屋の用途によって目安が示されており、倉庫の場合は5回/h程度が挙げられています。
人員による計算
人員による必要換気量の計算は、主に事務所や会議室など、人の滞在が多い空間で用いられます。この計算では、在室者一人あたりが必要とする換気量を基に算出します。一般的に、成人一人が呼吸によって排出する二酸化炭素の量などを考慮し、一人あたり毎時30㎥の換気量が必要とされています。総必要換気量は、「一人あたりの必要換気量×在室人数」で求めることができます。倉庫においても、作業員が常時滞在するエリアなどでは、この人員に基づいた計算方法が適用される場合があります。
効率的な換気方法
倉庫の換気を効率的に行うためには、倉庫の構造や用途に合わせた適切な換気方法の選択と設備の配置が重要です。自然の力を利用する方法から機械的な装置を用いる方法まで様々あり、それぞれの特徴を理解して組み合わせることで、より効果的な換気を実現できます。また、最近では24時間換気システムなど、常時稼働することで安定した換気を維持する方法も普及しています。
自然換気の特徴
自然換気は、風力や温度差を利用して倉庫内の空気を入れ替える方法です。窓やドア、あるいは換気口などを複数箇所に設けることで、外部の風圧による圧力差や、室内外の温度差によって生じる空気の密度差を利用して自然な空気の流れを作り出します。特別な動力を必要としないため、運用コストがかからないという利点がありますが、気候条件に左右されやすく、無風時や温度差が小さい場合は十分な換気が行えない可能性があります。効率的な自然換気を行うためには、空気の入口と出口を対角線上に配置するなど、空気の通り道を考慮した開口部の設置が重要です。
機械換気の特徴
機械換気は、換気扇や送風機などの機械設備を用いて強制的に空気の供給や排出を行う換気方法です。外部環境に左右されずに安定した換気量を確保できるという大きな特徴があります。給気ファンと排気ファンを組み合わせることで、計画的な空気の流れを作り出すことが可能になります。24時間換気システムを導入すれば、常時一定の換気量を維持し、倉庫内の空気環境を良好に保つことができます。倉庫の規模や用途、必要な換気量に応じて様々な種類の換気扇や送風機があり、効率的な換気のためには適切な設備選定と配置計画が重要となります。
効果的な換気設備
倉庫における効果的な換気設備としては、倉庫の規模や構造、換気の目的に応じて様々な種類があります。一般的には、大型の換気扇やルーフファンなどが用いられ、強制的に空気の排出や供給を行います。広い空間の空気を効率よく循環させるためには、シーリングファンやエアー搬送ファンなどが補助的に用いられることもあります。また、倉庫全体を常時換気するためには、24時間換気システムの導入も有効です。湿気対策としては除湿機、特定の汚染物質対策としては集塵機や脱臭装置なども換気設備と組み合わせて使用されることがあります。重要なのは、倉庫内の空気の流れを考慮し、給気口と排気口のバランスや配置を適切に計画することです。
空気の流れを考慮した換気
効率的な換気を行うためには、倉庫内の空気の流れを適切にデザインすることが非常に重要です。単に換気扇を設置するだけでなく、どこから新鮮な空気を取り込み、どこから汚れた空気を排出するかを考慮し、空気の通り道を作る必要があります。窓や換気口を対角線上に配置したり、吸気口と排気口の位置関係を考慮したりすることで、空気のショートサーキットを防ぎ、空間全体に新鮮な空気を循環させることが可能になります。倉庫内のレイアウトや保管物の配置も空気の流れに影響するため、これらの要素も考慮に入れた換気計画を立てることが、換気効率を高める上で不可欠です。
危険物倉庫の換気
危険物倉庫における換気は、一般的な倉庫とは異なり、より厳格な基準と注意が必要です。危険物の種類に応じた適切な換気設備を設置し、火災や爆発といった重大な事故を防ぐための措置が求められます。ここでは、危険物倉庫の定義から、換気が必要な理由、そして換気に関する具体的な基準について解説します。
危険物倉庫とは
危険物倉庫とは、消防法によって定められた危険物を貯蔵・取り扱うための専用倉庫です。消防法では、危険物の種類や量(指定数量)に応じて、その貯蔵や取り扱いに厳しい基準が設けられており、危険物倉庫はこれらの基準を満たす必要があります。危険物には引火性や発火性があり、取り扱いを誤ると火災や爆発といった重大な事故に繋がる危険性があるため、一般的な倉庫とは区別され、特別な構造や設備、管理体制が求められます。
危険物倉庫に換気設備が必要な理由
危険物倉庫に換気設備が必要な理由は、主に火災や爆発の防止にあります。危険物の中には、常温でも可燃性の蒸気やガスを発生させるものがあり、これらが倉庫内に滞留すると、わずかな火花や高温によって引火・爆発を引き起こす危険性があります。換気設備を設置し、これらの可燃性蒸気やガスを適切に外部に排出することで、倉庫内の濃度を安全なレベルに維持し、火災リスクを低減することができます。また、換気は室温の上昇を抑える効果もあり、一部の危険物の自然発火を防ぐためにも重要です。消防法においても、危険物を取り扱う建築物には換気設備の設置が義務付けられています。
危険物倉庫の換気設備の基準
危険物倉庫の換気設備の基準は、消防法および関連する条例によって細かく定められています。主な基準としては、室内に滞留する可燃性の蒸気やガスを効率的に排出できるよう、排気口を床面に近い位置に設けること、換気回数を法令で定められた回数以上にすることなどが挙げられます。また、使用する換気設備は防爆構造とする必要があり、電気設備なども防爆仕様とすることが求められます。危険物の種類や貯蔵量によって詳細な基準が異なるため、関係法令を十分に理解し、専門家と連携して適切な換気システムを設計・設置することが極めて重要です。
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